従来, 消化吸収障害モデルとして使用されてきた膵管結紮ラットは, 比較的短期の飼育でも膵臓が萎縮することが知られている。そこで, 本実験では膵機能は正常であるが消化吸収能が障害されたラット (MWラット) を栄養実験に使用することとし, このラットのモデルとしての有用性について検討するとともに, 中鎖脂肪酸トリグリセリド (MCT) を摂取させた場合の栄養状態に及ぼす影響について, サフラワー油 (LCT) を対照として比較検討した。 その結果, LCTを摂取させたMWラットの脂肪および窒素の吸収率は, 健常ラットに比較して有意に低下し, とくに脂肪の吸収障害は顕著であった。また, MWラットは体タンパクの異化も亢進し, また低栄養状態下にあることが認められ, 術後の消化吸収障害モデルとして有用であった。 一方, MWラットにMCTを摂取させた場合, LCTに比較し吸収性が顕著に優れていた。さらに, MCTは体タンパクの異化亢進を緩和させ, 栄養状態を改善させることが認められた。 以上の結果から, 胆汁・膵液が欠損した消化管術後の消化吸収障害下にあっても, MCTは吸収性のみならず栄養学的にも十分な有効性を示し, 脂肪源素材としてきわめて有用であると判断された。