パン酵母に通常の含有量の約200倍の量に当る6mg/g湿潤菌体のチアミンを集積させ, 菌体内におけるチアミンおよびチアミンピロリン酸エステルの存在部位を, プロトプラストを調製して, 細胞分画および蛍光顕微鏡観察によって検討した。得られた知見は以下のとおりである。 1) チアミン集積酵母からプロトプラストを調製した際に, 半分以上のチアミンがプロトプラストに残留した。また, プロトプラスト標本をフェリシアン化カリウムで処理して蛍光顕微鏡によって観察すると, 明らかな蛍光がみられる。これらのことから, 集積されたチアミンの少なくとも半分以上が原形質膜内に存在すると考えられる。 2) プロトプラストをホモジナイズし, 分画したところ, 遊離のチアミンも, チアミンピロリン酸エステルも, 大部分が細胞質ゾルの分画に検出された。しかし少量は顆粒の分画にも見いだされた。この結果は, 蛍光顕微鏡による観察結果とも一致する。