血糖値の変化に対する大麦の影響を明らかにするために正常動物と実験的糖尿病発症動物を用いて検討した。実験にはSprague Dawley系雄ラットを用い, 糖尿病動物はストレプトゾトシン (40mg/kg体重) を腹腔内投与して作成した。 実験Iでは4週齢ラットに大麦食, 玄米食, 小麦ふすま食, α-コーンスターチ食を64日間摂取させた。その後すべてのラットを糖尿病とした。糖尿病を発症させた後のラットの体重は大麦食と玄米食のみ増加が見られたが大麦食では飼料摂取量はもっとも低かった。正常期ラットの飼料摂取後およびグルコース負荷後の血糖値は大麦食摂取ラットで低く, 糖尿病発症後でもグルコース負荷後の血糖値は大麦食での抑制が顕著であった。大麦食-糖尿病ラットでは腹腔内へのグルコース負荷でも血糖値の上昇が抑制されており, 体内における糖代謝の改善が認められた。さらに塘尿病発症後の空腹時血糖値は, 25日目には大麦食ではほぼ塘尿病発症前のレベルに回復し, 47日後の血清インスリンはα-コーンスターチ群より有意に高くなっていた。 実験IIでは大麦とα-コーンスターチ食を摂取させて, 正常ラットと糖尿病ラットの間で比較した。糖尿病発症後33日目では大麦食ラットは, グルコース負荷後の血糖値の変化はα-コーンスターチ食-正常ラットよりむしろ低くなっていた。 以上の結果より, 大麦は糖尿病患者の治療食として用いた場合に糖代謝の改善が期待されることが示唆された。