油脂中のトコフェロール (Toc) の熱分解, 油脂の熱酸化および着色に及ぼすオリザノール, BHT, セサモールもしくはチオジプロピオン酸とアスコルビルステアレート (As. S) との併用効果について検討した。 1) オリーブ油, 大豆油, 大豆硬化油中のTocの熱分解に対してオリザノールおよびAs. Sは単独添加では, 加熱初期では防止効果を示すが, 10時間後では防止効果は認められなくなった。しかし, 10時間後でも両者併用の場合は, オリーブ油と大豆硬化油で高い防止効果を示し, かつ, As. Sの添加量が多いほどその効果は大きい。 2) Tocの熱分解防止にBHTはほとんど効果を示さないが, As. Sとの併用で効果が得られ, ことにオリーブ油で防止効果は顕著であった。 3) 加熱初期ではセサモールは単独添加でもオリーブ油中のTocの熱分解を防止したが, その後は防止効果は急減し, 10時間後ではTocは完全に分解した。セサモールとAs. Sとの併用では, 10時間後でもTocは残存し, ことにAs. Sの添加量が多いほどTocの残存率は高い。大豆油においても両者の併用はTocの熱分解をいくらか防止した。 4) 加熱による油脂の着色は, オリザノール, BHT添加ではあまりみられないが, セサモール添加オリーブ油で濃い赤色がみられた。大豆油は濃赤色を呈さなかった。セサモール添加によるオリーブ油の着色は, As. Sの添加でかなり抑えられ, As. Sの添加量が多いほど赤色が強く減色された。 5) チオジプロピオン酸はAs. Sとの併用で, それぞれの単独添加に比べTocの熱分解をより多く防止した。また, 加熱油の着色も少なく, かつ, As. Sの添加でさらに着色は抑えられ, アニシジン価やカルボニル価も低い。したがって, 油脂の熱酸化, 着色およびTocの熱分解防止面で, チオジプロピオン酸とAs. Sとの併用は, 先に報告した没食子酸, 大豆レシチン, カテキンや今回使用したBHT, オリザノールもしくはセサモールとAs. Sとの併用よりもすぐれていた。