健康な成人男子と女子を被験者として, 混合唾液量に及ぼす木の芽およびレモン皮の影響を定量的にしらべた。 1) 唾液量の測定に際し, あらかじめレモン皮 (=3g) の香りを30秒間匂いだ場合と香りを同時に30秒間匂いだ場合とも, 唾液量が有意に増加した。 2) レモン皮の香りを匂ぐのと同時に唾液採取を実施した場合, レモン皮の量と唾液量との間には量-応答関係が成立した。すなわち, レモン皮の香りを匂ぐと, レモン皮の量の増加とほぼ比例して唾液量が増加した。しかし, レモンの皮の量が4.5g以上ではこの関係は成立しなかった。 3) 唾液量は木の芽の香りを匂ぐと有意に増加したが, 木の芽のみをみるだけでは変動しなかった。また, 木の芽の香りを匂ぐと同時にそのものをみたときの唾液の変化量は, 木の芽の香りのみを匂いだときの唾液の変化量より大きかった。 以上より, 料理に添えるレモン皮や木の芽の香りを匂ぐと唾液量は有意に増加する。また, 木の芽をみただけでは唾液量の変動はみられず, この場合, 唾液の分泌に対して視覚による関与はないものと推定される。