高血圧状態からの栄養因子の改善が, 高血圧疾患の予後に及ぼす影響を検討するために, 脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット (SHRSP) の血圧が200mmHgを示す8週齢および230mmHgを示す10週齢から魚肉をタンパク源とした飼料 (粗タンパク質22%) を投与して, 血圧, 脳卒中病変の発生および寿命に及ぼす影響を検討した。 1) 血圧の上昇抑制効果は, 魚肉飼料の投与時期が早期ほど顕著であった。しかし, 血圧が230mmHg以上になってからの投与では, その効果は認められなかった。 2) 生存日数は, 対照群に比べて魚肉飼料投与群では著しい延長を示した。対照群に対する延長割合は5週開始群で2.94, 8週開始群で3.15そして10週開始群で2.75であった。 3) 脳卒中発症率は, 対照群では100%であったが, 魚肉飼料の投与を正常血圧期の5週齢より開始した群は0%で, 8, 10週齢より開始した群では, それぞれ33, 50%であった。そして出血をともなう病変の発生割合も対照群より低下した。 4) 尿中のNa/K比は, 対照群の飼料から魚肉飼料に置換すると低下した。 5) PRAは, 対照群に比べ5および8週開始群では有意に低値を示したが, 10週開始群では対照群と変わらなかった。これらの値は血圧値と相関していた。 6) 大動脈比体重は対照群に比べて魚肉飼料群ではいずれも有意に小さく, 血管壁の肥厚が抑制された。そして, 弾性タンパクであるPartridgeエラスチンおよびLansingエラスチンも魚肉飼料群が対照群に比べていずれも高値を保持した。 これらの結果は, 幼若期のみならず高血圧進行期および高血圧確立期からでも栄養因子を改善すればSHRSPの脳卒中の発生抑制や延命に有効であることを示している。