魚肉をタンパク源とする飼料を脳血管病変進行期のSHRSPに投与して, 活性酵素や過酸化脂質の消去系に及ぼす影響を調べた。 1) 血清TBARS値は, 対照群, 魚肉飼料群とも10週齢までは大きな変動はなかった。対照群では血圧が250mmHgに達する13週齢ごろより急増したが, 魚肉飼料群ではその増加は抑制された。SOD活性およびGSH-Px活性は, 対照群ではTBARS値の上昇と相前後して急激な低下が認められたが, 魚肉飼料群では活性の低下は認められず, 30週齢時でも高値を維持した。 2) SHRSPに1%食塩水を負荷して高血圧性血管病変の進行を促進する条件でも, 魚肉飼料を投与したSHRSPでは, 赤血球GSH-Px活性やSOD活性の低下が抑制され高い活性値を保持し, TBARS値の上昇を抑制した。 3) 赤血球GSH-Px活性の加齢に伴う変動をSHRSPおよび正常圧のWKYでしらべた。WKYおよびSHRSPともGSH-Px活性値は若齢期には変わらなかったが, 加齢に伴って上昇した。WKYでは, 17週齢に最大活性を示し, それ以降も高い活性を保持した。SHRSPはWKYより早期に急激な活性の上昇がみられ, 血圧が250mmHgに達したころから活性は急激に低下し, 死亡するラットも増えた。また, SHRSPに食塩水を負荷すると, GSH-Px活性の上昇は対照群よりも急激で, 早期からはじまり, しかも高値で推移した。 グルタチオン系の抗酸化力の低下は組織の酸化的障害の防御機構の破綻を招き, 脳卒中発症の引き金となるが, 高血圧状態からでも, 栄養因子の改善はこれらの障害の進行を遅延, 防御することが以上の結果より示唆された。