ウシの凍結乾燥胸腺 (FDT) を入手し, アセトンにより脱脂後, 水抽出, 加熱処理し, 噴霧乾燥して低分子画分 (LMT) を得た。10% FDTもしくは2% LMTを含有する飼料を調製し, SHRもしくはWKYに3週齢後期から投与を開始した。 6, 8, 10, 12週齢に非観血法により収縮期血圧を測定した結果, 8週齢以降, FDTもしくはLMTを摂取したSHRの血圧の上昇が低く抑えられた。しかし, WKYではFDTもしくはLMT摂取による血圧の変化はほとんどみられなかった。 14~16週齢まで, FDTもしくはLMT含有飼料を投与して飼育した後, 全血および臓器を採取し, 臓器重量, 各種血清酵素, 血清タンバク質分画, 血清コレステロール, 脾細胞の幼若化等を調べた。 SHRへのFDT投与により, 肝臓重量, 血清グロブリン, 血清コレステロール, 血清GPT活性, PRC等に変化が認められた。LMT投与では, 血清コレステロールの低下をみたが, その他の生理学的因子に変化はみられなかった。 以上より, FDT中には, SHRの血圧上昇を抑制する複数の因子の存在が推測された。その作用機序は, SHRの高血圧症発症機序にかかわるものと推定された。