妊娠時の鉄欠乏性貧血下における胎仔発育に及ぼす乾燥酵母含有飼料の影響をラットを用いて検討した。 妊娠前に市販飼料, または飼料100g当りの鉄含量を1.0mgに調整した鉄欠乏飼料を7週齢より3週間与えた。鉄欠乏飼料を与えた群は潜在性の鉄欠乏状態を示した。10週齢時に交配し, 妊娠1日目に各群をさらに2群に分別し, 妊娠期間中に飼料100g当りの鉄含量を5.0mgに調整した対照精製飼料または25%乾燥酵母飼料を摂食させた。すべての群において, 赤血球数, ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値や妊娠21日目の血清鉄濃度ならびに肝臓, 脾臓の鉄含量は, 著明に減少し, 明らかな鉄欠乏性の貧血症状が発現した。 妊娠21日目の胎仔生存率 (胎仔数/胎盤数) において, 妊娠前に鉄欠乏飼料を与え, 妊娠期間中に対照精製飼料を投与した群の妊娠21日目の胎仔生存率 (胎仔数/胎盤数) は低く, 胎仔吸収が高頻度に発現していた。一方, 妊娠期間中に25%乾燥酵母飼料を摂食した群は, 妊娠前の鉄欠乏飼料投与により潜在性鉄欠乏状態であったにも関わらず, 胎仔生存率は高い比率となり, 明らかに胎仔吸収が軽減されていた。 妊娠前に与えた飼料が市販飼料, 鉄欠乏飼料のいずれでも妊娠期間中に25%乾燥酵母飼料を摂食した群の胎仔1匹当りの重量は, 有意に大きく胎仔発育障害が軽減した。 以上, 乾燥酵母が妊娠時の鉄欠乏性貧血による胎仔吸収, 低体重仔等の胎仔発育障害を軽減し, 妊娠時の母体に有用であることが示唆された。