茶碗蒸しを作るときにキノコなどを入れる場合が多いが, そのときにマイタケを入れた場合, 茶碗蒸しが固まらなくなってしまうことにより, マイタケ中に存在するプロテアーゼに着目した。マイタケ中より数種のプロテアーゼを同定し, 卵白の加熱凝固阻止や, 卵白アルブミンの加熱分解への作用を調べ, 酵素的性質も明らかにした。 オボアルブミンは, 卵白中に50%以上を占める加熱凝固に関わるタンパク質である。SDS-電気泳動により, オボアルブミンの分解パターンを調べたところ, 中性域と酸性域でよく分解されることが観察され, 中性プロテアーゼと酸性プロテアーゼの存在が示唆された。マイタケ抽出液のDEAE-セルロースとSephadex-G75によるゲル濾過によりプロテアーゼA, B, Cと酸性プロテアーゼが同定された。プロテアーゼAは分子量約20,000と推定され, すでに橋本らに報告されているメタルプロテアーゼと良く似た性質を示した。プロテアーゼBについては, 分子量がプロテアーゼAのおよそ2倍の約45,000と推定された。この点は, 橋本らが報告したものとは異なっており, 至適pHも7と中性的であったが, やはりメタルプロテアーゼと思われる。プロテアーゼCについては, Bと同じ分子量であったが, 至適pHは6付近であった。酸性プロテアーゼはペプスタチンで阻害される典型的なカルボキシルプロテアーゼで, 分子量は約45,000と推定された。 プロテアーゼA, B, Cは, いずれもオボアルブミンを分解したが, 卵白に対しては単独では凝固阻止は見られなかった。しかし, 三種のプロテアーゼを混合すると, 凝固が妨げられた。以上, マイタケ中に未知の新たなプロテアーゼが存在することを見出し, また, 卵白の加熱凝固阻止作用についてはマイタケ中のプロテアーゼが共同で関わっていることが明らかにされた。