シソ油, シソ油とコーン油の混合油, およびコーン油 (それぞれα-Ln/LA比=3.26, 0.32, 0.03) を配合した液状経腸栄養剤を調製し, それぞれ小腸切除ラットに経腸的に投与したときの下痢の発生頻度に及ぼす影響を検討した。さらに, 下痢発生に密接に関連するとされる腸内容物の消化管通過時間, 血漿中および回腸・大腸粘膜中のPG類 (PGE2およびPGF2α) および大腸粘膜中の脂肪酸濃度に及ぼす影響も合わせて検討した。 1) シソ油群および混合油群の下痢発生頻度は, コーン油群に比べ, 投与2日目以降で低値を示す傾向にあり, とくに投与2日目で有意な低値を示した。 2) シソ油群および混合油群の消化管通過時間はコーン油群に比べ延長する傾向にあり, とくにシソ油群では有意な延長を示した。 3) シソ油群および混合油群の血漿中および大腸粘膜中のPGE2はコーン油群に比べ低値を示す傾向にあり, とくにシソ油群ではいずれも有意な低値を示した。なお, 回腸粘膜中のPGE2および血漿中および消化管粘膜中のPGF2αはいずれも3群間で差が認められなかった。 4) シソ油群および混合油群の大腸粘膜中におけるエイコサペンタエン酸濃度はコーン油群に比べ, 高値を示す傾向にあり, とくにシソ油群では有意な高値を示した。また, シソ油群および混合油群のエイコサペンタエン酸/アラキドン酸比やω3系/ω6系比でも有意な上昇を示した。 以上の結果から, α-LnA/LA比を3.26もしくは0.32程度とした脂肪を含む経腸栄養剤の投与により, 消化管術後の下痢を抑制する可能性が示唆された。また, この効果は消化管通過時間の延長やPGE2ならびに脂肪酸代謝の変動を伴って発現することが示唆された。