脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット (SHRSP) に魚肉をタンパク源とした飼料を10週齢から20週間投与し内皮機能に及ぼす影響を抵抗血管である腸間膜動脈を用いた灌流実験で調べ, 降圧剤と比較した。 1) 魚肉飼料を投与したSHRSPの血圧は対照群に比べて低く, 220~230mmHgで推移した。一方, カプトプリル (ACE阻害剤), ヒドララジン (血管拡張薬) を投与したSHRSPでは著しい血圧下降が認められ, それぞれ150~l60mmHg, 180~190mmHgの血圧を維持した。 2) 腸間膜動脈標本をノルアドレナリン (NA: 8×10-6M) で前収縮させている状態で累積的にアセチルコリン (ACh: 10-6M) を灌流したときの弛緩率は, WKY>SHR>SHRSPの順で, SHR, SHRSPの内皮依存性弛緩はWKYに比べ減弱していた。 3) 栄養改善および降圧剤処置を行ったSHRSPの腸間膜動脈標本をNA (8×10-6M) の存在下でACh (10-6M) を灌流させ内皮依存性弛緩をみた。魚肉飼料群の弛緩率は, 66%であり対照群 (33%) に比し高く, WKY (70%) に近い値であった。降圧剤処置群の弛緩率はカプトプリル処置群が61%, ヒドララジン処置群は54%であった。 SHRSPの内皮依存性弛緩の減弱は加齢, 血圧上昇により起こるが, 魚肉飼料による栄養条件の改善で, 降圧剤のような血圧下降がみられなくても保護された。栄養改善は, 血管壁の健全な構築と維持に役立ち, それが脳血管疾患の発症抑制や遅延につながっている理由の一つと考えられる。