健常な女子学生を対象に食事調査を行い, 摂取脂肪酸組成のn-6/n-3比の実態を調べ, 血漿および血小板リン脂質中のn-6/n-3比や全血凝集能等との関係について検討し, 次のような結果が得られた。 1) 対象者全体 (n=50) の摂取脂肪量と脂肪酸組成を分析した結果, 脂質エネルギー比率の適正値である20~25%内に入る者は全対象者のわずか20%であり, なかにはエネルギー比率が40%にまで達する者もあった。 2) n-6系やn-3系PUFAの摂取量にはかなり差があり, n-6/n-3比も3.3~17.8 (平均6.1±3.3) と大きな個人差がみられた。 3) 摂取脂肪酸のn-6/n-3比と血漿および血小板リン脂質中の脂肪酸のn-6/n-3比との間には, いずれもきわめて有意な正の相関 (p<0.001) が認められた。 4) 摂取脂肪酸のn-6/n-3比が低い者ほどコラーゲン刺激による全血凝集能も低い値を示し, これら両者の間には有意な正の相関 (p<0.001) が認められた。 5) 摂取脂肪酸のn-6/n-3比が低い者ほど血漿中の総コレステロールとトリグリセリド濃度は低く, 逆にHDL-コレステロール濃度は有意に高かった。 以上のことから, 血栓症等の循環器系疾患を予防するためには, n-6/n-3比の高い者は日頃から魚介類等 (n-3系PUFAを多く含む食品) の摂取に心がけ, 血中脂肪酸中のn-6/n-3比を低くするようにすることが大切であるものと思われた。なお, 今回の調査で明らかになったように, 対象者の栄養摂取状況や血液性状には大きな個人差がみられることから, それぞれの値を一概に調査対象者の平均値で論ずることは問題があるものと思われた。