雌ラットに普通量 (3.5mg Fe/100g food) と過剰量 (35.0mg Fe/100g food) のヘム鉄 (酵素処理ヘム鉄, HIP) および非ヘム鉄 (クエン酸鉄, FC) を投与したときの, 鉄利用性と各組織における鉄含量ついて検討を行った。 1) 出納実験より求めた見かけの吸収率, 体内保留率には, 有意差はみられなかったがFC普通食群でHIP普通食群より約2%高い傾向があった。 2) 血液検査でのヘモグロビン値, ヘマトクリット値, 血漿鉄およびトランスフェリン飽和率は, FC食群ではHIP食群より有意に高値であった。 3) 鉄の過剰投与により, 肝臓での鉄の蓄積がみられたが, FC食群でHIP食群より, また過剰食群で普通食群より鉄含量が有意に高くなった。 4) FCとHIPの鉄利用性の差違は, 小腸において吸収された後, 血中への鉄の取り込みの違いによるものであることが推察された。