E679型ランシマット (Metrohm社製) 装置を用い, オリーブ油, 大豆油, 鯨油に空気 (20l/h) を吹き込みながら120℃で酸化させた。油脂の酸化により生成する揮発性分解生成物中, 今回はギ酸, 酢酸, プロピオン酸, イソ酪酸などの有機酸の生成量および導電率の上昇に及ぼす有機酸や脂肪酸の効果について検討した。 1) 大豆油の酸化による揮発性分解生成物中にギ酸, 酢酸, プロピオン酸, イソ酪酸, イソ吉草酸などの有機酸と酪酸をHPLC分析で検出した。 2) 大豆油の揮発性分解生成物中に遊離脂肪酸としてミリスチン酸, パルミチン酸, ステアリン酸, オレイン酸, リノール酸, リノレン酸などをGLC分析で確認した。 3) オリーブ油, 大豆油, 鯨油の3油脂中, ギ酸, プロピオン酸, イソ吉草酸などの有機酸の生成は鯨油で最も早く, ついで大豆油, オリーブ油の順であった。 4) 生成割合の多い有機酸はイソ吉草酸で, ついで, イソ酪酸, プロピオン酸, ギ酸の順で酢酸は微量であった。 5) ギ酸, プロピオン酸, イソ酪酸, イソ吉草酸などの有機酸の生成傾向と油脂の導伝率の上昇傾向は類似していた。酢酸は油脂の変敗点 (誘導時間) をすぎて30分後から生成しはじめた。 6) 導電率の上昇においてはギ酸よりもイソ吉草酸, ついで, プロピオン酸, イソ酪酸, ギ酸などが総合的に作用していた。脂肪酸では炭素数8以下の脂肪酸では導電率の上昇に関与したが, ギ酸, プロピオン酸に比べると上昇効果は弱い。 炭素数12以上の脂肪酸では導電率の上昇には関与しなかった。