鉄200ppmを加えたクッキーにおける数種の酸化防止性物質の効果およびトコフェロールとの相乗効果を40℃の保存試験で検討した。 1) 鉄を加えたクッキーはばい焼によりわずかに黒みをおび鉄の味がしたが, 縮合リン酸塩0.1%の添加で鉄を含まない通常のクッキーと同程度になった。 2) コーヒー豆粉末10%, ローズマリー粉末0.2%およびコーヒー酸200ppmの添加はクッキーに含まれる脂質の過酸化物価の上昇を強く抑制したが, 混合トコフェロール濃縮物 (m-Toc) 100ppmと併用しても効果が変わらないかまたは酸化を促進した。一方, 単独ではまったく酸化防止効果を示さなかったL-プロリン500ppmの添加はm-Tocと強い相乗効果を示し, 過酸化物価の上昇を強く抑制した。 3) 40℃保存60日後のクッキーのトコフェロール残存率はL-プロリン添加の場合が最も高く, 他のクッキーも70%以上であった。 4) 酸化臭の発生は単独ではコーヒー豆粉末の添加で強く抑制されたが, m-Tocとの併用ではL-プロリン, コーヒー豆粉末および縮合リン酸塩の添加で強く抑制された。 以上の結果, 鉄含有クッキーの酸化防止にはコーヒー豆粉末の効果が強く, またm-Tocの添加も有効であることがわかった。さらにL-プロリンとm-Tocがきわめて強い相乗効果を示し酸化を防止することがわかった。L-プロリンはタンパク質構成成分であり体内に取り込まれても安全と考えられるので鉄含有クッキーの酸化防止においてこの組合せはきわめて実用性が高いと考える。