雌ラットに酵素処理ヘム鉄 (HIP) を過剰投与したときの, 各組織における鉄含量と過酸化脂質量の相関関係について, さらに, 肝臓における, 過酸化脂質による組織障害の程度について, クエン酸鉄 (FC) と比較検討した。 1) 鉄の過剰投与により, 肝臓と肺に鉄の蓄積がみられた。 2) 肝臓1g当りの鉄含量と過酸化脂質量には, FC食群では r =0.5388と, 有意ではなかったが鉄含量の増加に伴って過酸化脂質量も増加する傾向がみられ, HIP食群では r =0.6539 ( p <0.05) の有意な相関がみられた。 3) 肝臓における単位鉄含量当りの過酸化脂質量はHIPでFCより有意に高かった。 4) 肝ミクロソーム画分におけるアニリンヒドロキシラーゼは, 鉄などの酸化ストレスの増加により活性が低下して抗酸化的に働くが, HIPの過剰摂取によって, 反対に活性は上昇した。 5) HIPの過剰摂取は, 鉄による非酵素的な脂質過酸化だけでなく, 酵素的な脂質過酸化も促進する可能性が示唆された。