脂肪酸組成の異なる油脂を含む食事の摂取が血漿等の脂肪酸組成に及ぼす影響を検討するため, 女子学生12名を6名ずつのA, B2群に分け, クロスオーバー試験(A群: 魚肉-牛肉, B群: 牛肉-魚肉) により魚肉または牛肉を主菜とする日常的食材を用いた実験食を各5日間摂取させた。実験食摂取による血漿および赤血球膜中脂肪酸組成の変動は以下のとおりである。 1) 血漿中脂肪酸組成は, 魚肉食によりA, B両群ともEPA, DHAが増加し, リノール酸, オレイン酸が減少した。牛肉食では, A, B両群ともオレイン酸が増加し, EPA, DHAが減少した。これらの変化は実験食切り替え後短期間で起こるため, A群10日目の変動はB群5日目の変動と, B群10日目の変動はA群5日目の変動と類似のパターンを示した。 2) 赤血球膜中では, A, B両群とも最初の5日間でオレイン酸が増加し, リノール酸, パルミチン酸, DHAが減少した。実験食の切り替えによるクロスオーバーの影響は少なかった。その結果, 10日目の変動はA群, B群とも類似パターンとなった。 3) 以上のことから, 血漿中脂肪酸組成変動に対する carry-over effect は大きくなく, 摂取脂質によって短期間に絶えず影響を受ける傾向があるのに対して, 赤血球膜中脂肪酸組成は, 短期間では摂取脂質よりもLAの低値によって影響される傾向のあることが明らかになった。