乳清タンパク質を Bacillus subtilis 由来のアルカリプロテアーゼとブタ膵由来のトリプシンにより酵素分解し, 分解物 (WPH) 中に含まれるACE阻害短鎖ペプチドの単離を行うとともに, 単離されたペプチドのアミノ酸配列を分析したところ, 以下のような結果が得られた。 1) WPH原液中には強いACE阻害活性が認められ, IC50は74μg prot./mLであった。 2) WPH原液をトヨパールHW-40を用いてゲル濾過クロマトグラフィーを行ったのち, 逆相HPLCを行った結果, No. 2とNo. 5の両画分に高いACE阻害活性が認められ, それぞれのIC50は22.8μg prot./mLと4.2μg prot./mLであった。 3) HPLCによって得られたNo. 2とNo. 5の両画分をさらにSMARTシステムを用いて逆相クロマトグラフィーによる微量精製を行った結果, それぞれAとBの二つの画分に強いACE阻害活性が認められた。それぞれのIC50は, No. 2のAが4.4μg pep./mL, Bが4.9μg pep./mL, No. 5のAが5.2μg pep./mL, Bが14.7μg pep./mLという値であった。 4) この四つの画分を濃縮, 乾固したのち, 再度SMARTシステムによるクロマトグラフィーを行い, プロテインシークエンサーによってアミノ酸配列を分析した結果, Phe-Leu, Val-Tyr, Ile-Leu, Val-Phe の4種類のジペプチドであることが明らかとなり, それぞれのIC50はPhe-Leuが16.0μM, Val-Tyrが17.7μM, Ile-Leuが21.2μM, Val-Pheが55.5μMであった。 5) これらのジペプチドの中で Phe-Leu と Ile-Leuは食品タンパク質由来ものもとしては新規なものであり, しかも, Val-Phe 以外の3種類のジペプチドは難消化性の可能性が示唆された。