健常閉経期女性個々における骨量動態を明らかにすることを目的とし, 東京都在住の40-60歳健常閉経期女性357名に対し, DXA法による腰椎骨密度を初回および5年後に測定した。対象者を閉経状態別に7群に分け, 各群間において縦断的に検討した腰椎骨密度5年間の変化率, 骨吸収マーカー, 骨粗鬆症診断基準の三つのパラメーターを比較することにより, 個々における実際の骨量の変動と閉経との関連を明らかにすることを試みた。その結果, 1) 月経状態別に検討した5年後の腰椎骨密度は閉経前から閉経後の各群において初回時に比し有意に減少していた。 2) 腰椎骨密度減少は閉経前の月経正常者からすでに始まり, その減少率は月経不順群では月経正常群に対し約2倍であった。 3) 骨密度減少の最も顕著な時期は閉経への移行期にあたる perimenopause 期であり, その減少率は5年間で-11.3%であった。閉経後の減少率は閉経後経過年数とともに鈍化したが, 閉経後10年以上でもわずかな骨量減少が続いていることが示された。 4) 5年後に測定した尿中骨代謝マーカーのD-Pyr/Crは月経不順群において, 月経正常群に比し高値となり, perimenopause 群-閉経後の各群において, 月経正常群に比し有意な高値を示した。 5) 骨粗鬆症の診断基準により低骨密度者の分布状況を群別に比較すると, perimenopause 群から閉経後の各群において閉経前に比し低骨密度者の割合は有意に高かった。 以上のことから, 健常女性個々における閉経に伴う腰椎の骨量減少の推移が明らかとなり, 閉経前の早期からの低骨密度者のスクリーニングならびにそれぞれの時期に応じた骨量減少予防策を講じる必要性が示唆された。