小麦アルブミン (WA) は, その主成分である0.19-小麦アルブミンの有するアミラーゼ阻害活性によって, 炭水化物の消化吸収を遅延させ, 食後血糖上昇を抑制することが単回投与の試験で確認されている。本研究では, 軽症インスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) 患者計24例に, WAをスープの形態で1日3食, 3カ月間摂取させ, HbA1cならびに, その他の臨床的指標・所見などへの影響を二重盲検法で検討した。摂取開始前のHbA1c値により, 被験者を低HbA1c層 (5.5%以下) と高HbA1c層 (5.5%より高く8.0%以下) に分類した。HbA1c値は, 対照群では, 摂取開始前と比べて, 摂取期間を通して, 有意な変化がなかった。一方, WA摂取群では, 低HbA1c層では変化が見られなかったが, 高HbA1c層では, 摂取3カ月間のHbA1cに関するAUCが有意に低下し ( p <0.05), 摂取終了後の観察期間後も低下傾向が継続した。WA摂取群の1例で摂取初日および2日目に腹鳴が自覚されたが, 3日目以降収まり, その他にはWA摂取によると考えられる有意な随伴症状は認められなかった。WA摂取による食事摂取後毎の血糖上昇抑制を長期間反復することにより, 長期的な血糖コントロールが改善される可能性が示唆された。したがって, WAは軽症糖尿病や耐糖能障害を有する者に対する食事療法の補助手段として, 今後の活用が期待できるものと考えられた。