乳清タンパク質 (WPI) を Bacillus subtilis 由来のアルカリプロテアーゼとブタ膵由来のトリプシンにより酵素分解して得られた低分子量のペプチド粉末 (WPH: Val-Tyr, Phe-Leu, Ile-Leu, Val-Pheなどが含まれる) をSHRに連続的に経口投与した場合の血圧上昇抑制効果を分解前のWPI投与群を対照として比較検討し, 以下のような結果を得た。 1) WPH粉末中には in vitro で強いACE阻害活性が認められたが, その未分解物であるWPI粉末ではWPH粉末の5倍量を用いても阻害活性はみられなかった。 2) WPH粉末を重量比で10%となるように混入した餌をSHRに経口投与し, 経時的な収縮期血圧の変化を測定した結果, 投与開始2週間目から対照のWPI投与群に比べて有意 ( p <0.001) な血圧上昇抑制効果が認められ, 3週間目ではWPI投与群より28mmHgも低値 ( p <0.001) であった。 3) 実験終了後の臓器 (心臓, 肝臓, 腎臓, 肺, 腸, 脾臓, 膵臓) 重量はいずれも対照群との間に有意差は認められなかった。 4) 実験終了後の血清成分の分析では, WPH投与群の総コレステロール値が対照群に比べて有意 ( p <0.05) に低かったことから, WPH粉末投与による血清脂質の改善効果も示唆された。 以上の結果から, WPH粉末中に含まれるVal-Tyr, Phe-Leu, Ile-LeuおよびVal-PheなどのACE阻害ジペプチドが腸管からそのまま吸収されてSHRの血圧上昇を抑制しているものと推定されたが, これらの詳細については今後さらに検討が必要である。