本研究では, 若年期から高齢期の健常女性 (20代から70代計242名) を対象に, 腰椎・踵骨骨密度および骨吸収マーカーの一つである尿中遊離型 deoxypyridinoline (以下 free-Dpyr) の加齢による変動を捉えるとともに, 骨折との関連性についても比較検討した。その結果, 骨密度は, 腰椎・踵骨ともに加齢に伴い有意な減少が示され, その傾向は踵骨骨密度の方が顕著であった。とくに踵骨骨密度は, 20代に比べ40代が有意に低値を示し, 腰椎骨密度より早く骨量減少が生じる可能性が示された。尿中 free-Dpyr は, 閉経前の20代から40代にかけて若干減少してはいるものの差は認められず, ほぼ同一値を示し, その後閉経を境に有意な上昇を示した。20代から40代の閉経前群に比し, 50代から70代は, それぞれおよそ66%, 46%, 61%高値を示した。さらに対象者を閉経前および閉経後年数によって分類し閉経による free-Dpyr の動態を検討した結果, free-Dpyrは, 20代から40代の閉経前群に比し閉経直後から閉経後4年までは顕著な上昇を示し, その後減少傾向を示した。しかし, 閉経前の20代から40代の各年代に比べ, 閉経後の各群はいずれも有意な高値を示した。腰椎骨密度および free-Dpyr と骨折既往の有無について検討した結果, 低骨密度および free-Dpyr が高値の群は, 低骨密度および free-Dpyr が低値の群に比べ, 骨折発症頻度は, 5%の危険率で骨折が発症しやすいことが明らかとなった。以上のことから, 骨粗鬆症および骨折予防のためのスクリーニングとして, 骨密度の測定に加え, free-Dpyr の測定は有効であることが示唆され, 今後, 骨代謝マーカーの測定は, 骨代謝疾患の治療の指標としてだけでなく骨粗鬆症予防および骨折予防に対する骨量検診においても, 意義あるものと考えられる。