鉄剤を緑茶で服用しても影響はないとする報告がある。しかし, これらの報告は年齢, 栄養素摂取状況などを十分に考慮した検討ではない。そこでわれわれは, 18-24歳の若年女性のべ50名の対象者を, 無作為にミネラルウォーターのみ服用 (Control 群), 市販緑茶飲料のみ服用 (Tea群), 鉄剤をミネラルウォーターで服用 (Fe群), 鉄剤を市販緑茶飲料で服用 (Fe+Tea群) の4群に分け鉄剤吸収実験を行った。また, 実験前2週間の食事調査も行った。鉄剤にはクエン酸第一鉄ナトリウム製剤 (鉄として100mg相当量) を, 緑茶ば市販の缶入り飲料を用いた。鉄吸収の指標として血清中の鉄 (Fe), 総鉄結合能 (TIBC), 不飽和鉄結合能 (UIBC), フェリチンの測定を行った。実験により, Fe群どFe+Tea群の間には有意な差はなかったが, これら2群は他の2群より血清鉄濃度は有意に上昇し, 血清不飽和鉄結合能は有意に低下した。これらの結果から, 若年女性においてクエン酸第一鉄ナトリウム製剤を市販緑茶飲料で服用しても鉄吸収が阻害されることはないと考えられた。