脂質過酸化物を一次生成物のヒドロペルオキシドと二次生成物の低分子分解物に分けてマウスに投与したところ, いずれの場合も胸腺およびパイエル板などの免疫関連臓器が障害を受けやすいことを見いだした。そこで実際の食生活により近い状態で過酸化脂質を摂取した場合に受ける影響を明らかにする目的で, 酸化した大豆油を含む食餌でマウスを長期間飼育したところ, 胸腺および脾臓細胞の免疫能が変動した。このとき, 肝機能等は影響を受けなかった。次に食餌性脂質と生体内脂質過酸化および免疫系との関連について検討する目的で, 各種食用油脂を含む食餌でマウスを飼育した結果, n-3系高度不飽和脂肪酸を多く含み, 赤血球膜構成リン脂質過酸化の亢進が確認された魚油の摂取により免疫能が変動した。これらの結果は, 食物から摂取あるいは体内で生成する過酸化脂質が選択的に免疫系に影響を与えることを示唆している。