発表されたいくつかの文献をみる限り, わが国のエリート・アスリートの栄養摂取状況は, ジュニア選手からオリンピック選手まで, 必ずしも良好な状態にない。この背景には知識の欠如あるいは経済的理由などもあるが, 競技力向上と減量を過度に結び付ける sport subculture の存在も大きい。このため, 女子アスリート, 特に持久系 (中・長距離走, マラソン) や審美系 (体操, 新体操, チアリーディング) のアスリートでは, 摂食障害 (神経性食欲不振症・大食症など) の発生率が高い。摂食障害は難治性の疾患である。また摂食障害に至らずとも, トレーニング時に過度の食餌制限が加えられると, 下垂体-性腺系に障害が生じ, 無月経を招く。無月経により, 骨塩量, 免疫能, 認知能力などが低下する。アスリートの減量指導においては, むやみに体重や体脂肪率の値に意識を集中させるのではなく, 生活習慣の変更に力点を置くべきである。すなわち, 1) 夜遅くの飲食を避ける, 2) 高脂肪食を避ける, 3) 練習後早めに食事をとる, 4) 持久系のトレーニングを取り入れ, 遅筋で脂肪を燃焼させる, 5) ウェイトトレーニングで筋量を増やし, 基礎代謝を上げる-など, 具体的な行動を提示することである。