栄養素等の腸管吸収を調節することは疾病予防の一つの手段となりうるが, 腸管吸収のメカニズムは複雑である。トランスポーターやタイトジャンクション等, 腸管吸収に関わる分子の特性やその制御機構を解明するためには培養細胞を用いたアプローチが欠かせない。ヒト大腸がん由来の上皮細胞株Caco-2は単層培養するとさまざまな小腸上皮細胞様の機能を発現する。小腸の細胞とは異なる部分もあるので注意が必要だが, 疎水性薬物やコレステロールなどの吸収性は in vivo 実験の結果とも相関するなど, 腸管吸収モデルとして有用である。われわれはダイオキシンの腸管吸収性に影響を及ぼす食品成分等の検索を行うためのモデル実験系を, Caco-2細胞層とダイオキシン応答性肝細胞株を組み合わせることによって構築した。異物排出に関わるMDRIのようなトランスポーターもCaco-2には強く発現しており, 環境中に存在するさまざまな異物の腸管吸収性を解析する実験系としても有用である。メカニズム解析やスクリーニング実験におけるこれら培養細胞の重要性は高い。