現代日本は空前の飽食時代を迎えており, 遺伝的体質と相まって, 容易に肥満をはじめとする生活習慣病に罹る脅威にさらされている。これを予防するには, からだのエネルギー消費の大半を占める基礎代謝量を増大させて, エネルギー摂取と消費のバランスを図ることが必要である。本総説では, ヒトならびに高等動物のエネルギー代謝を制御している体内メカニズムを, (1) エネルギー消費を支配している交感神経系の重要性ならびにその活用, (2) 産熱器官でのエネルギー消費を司るミトコンドリアの脱共役タンパク質 (UCP) ファミリーの働きと生理的役割, (3) エネルギー消費の主たる実働器官としての骨格筋におけるグルコースならびに脂肪酸の代謝に及ぼすレプチン (肥満遣伝子産物) の中枢作用と, その新しいシグナル伝達系, そして最後に (4) 食生活上での実用的側面として, エネルギー消費を活性化する香味食品成分の探索と効果について, 筆者らの実験成績を交じえながら論述した。