本研究の目的は, 健常者対象の嗜好食品を含めた食品交換表 (N) を利用した食事コントロール法がQOLを保ちながら, 食生活改善に役立つかどうかを検討することである。栄養学を専攻していない一般の健康な女性16名 (年齢: 38.8±6.7歳) を対象に, 適正な範囲の体重および体脂肪率の減少を目標とした8週間の食事コントロールを文書連絡のみで実施した。被験者は, 日々の食事内容を単位式食事記録用紙に記入し, 指示された食事内容と実際の食事内容を比較することにより, 食事のセルフコントロールを実施した。最後まで食事コントロールを終了した13名 (年齢: 392±7.0歳) の結果の解析より, 被験者は適量の嗜好食品を摂取しながら, ほぼ指示エネルギー量を守ることができた。被験者の健康状態には問題がなく, 体重は54.9±6.7 (kg) から52.9±5.7 (kg) に, 体脂肪率も27.5±5.0 (%) から25.3±4.5 (%) に有意に減少した ( p <0.01)。タンパク質, 食物繊維, 鉄, ビタミンA, ビタミンB1, ビタミンB2, ビタミンCの栄養密度が有意に増加し ( p <0.05), 食事コントロール終了時の自記式質問票調査結果では, 13名中10名が「日々の栄養バランスがわかって参考になった」と回答し, 同時に合計9名の被験者が適量の嗜好食品も摂取しながら食事コントロールする方法を好意的に考えていた。以上より, 嗜好食品も含めた食品交換表 (N) を利用した食事コントロール法は,「食の楽しみ」にも配慮された負担の少ない方法であり, 健常者の食生活改善に役立つ可能性があることが示された。また, 食事コントロール終了約6カ月後の自記式質問票による追跡調査において, 13名中10名が減少した体重を維持または試験前の体重より少なかったことと, 10名が「量の目安がつくようになった。」と回答していることから, 交換表 (N) を利用した食事コントロールを実践した経験が, 試験終了後も各自の適正なエネルギーや食品摂取量を認識することに役立っている可能性が考えられた。