有害獣として駆除された野生エゾシカの多くは廃棄されているのが現状である。本研究では, シカ肉資源の有効活用に資する基礎的知見を集積する目的で野生エゾシカ背最長筋の栄養特性とその季節的変動を分析した。野生エゾシカ肉の水分は68.9-77.3%, タンパク質は21.0-26.6%, 脂質は0.3-6.1%, 灰分は1.1-1.4%であった。脂質含量は5月から8月にかけて増加して11月に減少していた。一方, 水分量は逆の傾向を示した。無機成分としては, 100g当たりカリウムは86.8-110.8mg, 鉄は4.5-7.7mg, 亜鉛は3.0-3.8mg, 銅は0.7-1.0mgであった。また, 鉛は0.7mg, カドミウムは検出されなかった。全脂質の主要な脂肪酸は, パルミチン酸, ステアリン酸, オレイン酸およびリノール酸であった。その中でも, 5月ではリノール酸が多く, 8月と11月ではパルミチン酸の割合が高かった。また, リノール酸, アラキドン酸およびドコサペンタエン酸の割合は11月にかけて減少し, これに対してパルミチン酸, パルミトレイン酸およびオレイン酸は増加した。総コレステロールは10.5-167.8mg/100gであった。