九州地域 (全7県) および中国地域 (山口県, 広島県, 岡山県) における水稲良食味品種ヒノヒカリを用いて米の食味評価の産地間差とその要因を検討した。各産地米ともそれぞれ基準米コシヒカリとの間には有意差はなく, 食味評価は良好であった。一方, 食味評価には産地間で有意な差が認められたが, 産地別の食味評価は生産年の違いによって異なった。産地別, 米の外観, 味, 粘り, 硬さに対する重回帰分析の結果, 味の食味評価への寄与が最も大きかった。産地別の米の理化学的特性は産地間で差が認められるものの, その傾向は生産年で異なった。産地別の食味評価と理化学的特性との関係では, テクスチャー特性の硬さと粘りの比 ( H/-H 比) との間に有意な負の相関関係が認められ, 食味評価が優れた産地は H/-H 比が小さかった。タンパク質含有率とアミロース含有率との間には一定の関係は認められなかった。以上, 産地別の食味評価には味が大きく影響を及ぼし, 食味評価の良否は H/-H 比が大きく関与していた。