本研究では, 運動習慣の有無がエネルギーバランスおよびそれに伴う栄養素等の摂取状況に及ぼす影響を検討した。対象者は, 長期の運動習慣を有する中年女性16名 (運動群) と運動習慣を有さない者12名 (コントロール群) とした。1日の総エネルギー消費量 (TEE) は二重標識水 (DLW) 法により測定し, 総エネルギー摂取量 (TEI) および栄養素等の摂取状況は, 食事調査法を用いて検討した。TEIは, コントロール群 (1,887±315kcal・day-1) に比べ, 運動群 (2,292±360kcal・day-1) で有意に高値を示した( p <0.01)。両群ともに, TEIとTEEとの間に有意な差はみられなかった。また, TEEとTEIとの間には有意な正の相関関係 ( r =0.434, p <0.05) が認められたため, 運動習慣に伴う消費エネルギーの増加は, 摂取エネルギーの増加により相殺される可能性があると考えられた。運動群はすべての栄養素等の摂取量が高値を示したが, 摂取エネルギー1,000kcalあたりの栄養素等の摂取量は, 両群間に有意な差は認められなかった。また, 大部分の栄養素等の摂取量とTEIとの間に有意な正の相関関係が認められた。これらのことから, 中年女性において, 運動の実施に伴うTEIの増加は栄養素等の摂取量の増加をもたらす可能性があると示唆された。