高糖質食ならびに高脂肪食にL-カルニチンを単回あるいは連続的に添加してラットのエネルギー消費に及ぼす影響を酸素消費量 (VO2) と呼吸商 (RQ) の面から検討し, 併せて高脂肪食の長期摂取による内臓脂肪の蓄積や肝臓ならびに血中の脂質代謝の変化についても解析した。暗期12時間 (摂食時) の累積酸素消費量はカルニチン1%の連続添加によって, 高糖質食群で7.7%, 高脂肪食群で7.5%有意に増加した。明期12時間 (非摂食時) においてもVO2は有意に高い値を維持した。その際, RQはカルニチンの添加によって両食餌群ともわずかに低下した。しかしながら, カルニチン1%の単回添加では, VO2は有意な上昇が認められなかった。高脂肪食で4週間飼育したラットの後腹膜ならびに副睾丸脂肪重量および体重は高糖質食ラットに比べて有意に増加し, この増加はカルニチン1%添加群で抑制された。高脂肪食ラットでみられる肝臓の中性脂肪 (TG) および総コレステロール(TC) 含量の著明な増加も, カルニチン添加食群で有意に抑制された。また, 血漿中のTG濃度は高脂肪食および高糖質食群ともカルニチンの連続添加によって低下したが, 血漿TC濃度は各群間で有意差が認められなかった。以上の実験結果から, カルニチンの連続投与はエネルギー消費を増大させる効果をもつとともに, 高脂肪食の長期摂取による内臓脂肪の蓄積や脂質代謝異常を抑制・改善することが明確になった。