明暗情報の入出力特性である調子再現は画像の世界ではシステムに最適なものが提案されてきている.一方,絵画の世界では調子の定量化が難しく,調子再現といった考え方自体が議論されてきていない.筆者らは前報においては,ノンフォトリアリスティックレンダリングにより線画を作成し,その画像の調子再現をコントロールし,主観評価を行うことで,線画という絵画に最適な調子再現曲線を求めたが,本研究ではノンフォトリアリスティックレンダリングにより,最も油絵に近いと評価された画像を作成し,前報と同様な方法で油絵の最適な調子再現について調べた.その結果,写真や線画に比べ,油絵ではローキーな画像はより暗く,ハイキーな画像はより明るい画像が最適とされることがわかった.油絵として受け入れられる画像は,最適な調子再現の写真よりクロマが大きいが,その大きさは風景とポートレートでは大きく異なった.風景では20前後の大きなクロマがないと油絵と受け入れられないが,ポートレートでは10前後の低いクロマでないと受け入れられない.