我々は習熟者の注目点の位置座標を検出して,画像修正の手順や調整量を定量化することに取り組んでいる.作業者の注目点は形状や陰影などの画像の構成要素に対して敏感で,作業に応じてその位置が変化すると考えられる.そこで本論文では画像の修正作業の操作量と注目点の変化を同時に測定するシステムを構築し,習熟者と素人の注目点を比較することで,画像の構成要素や修正手法との関連を調査した.対象を顔画像に限定して行った実験において,習熟者は傷や顎のたるみ,浮き出た血管などの不自然な部分に注目することが素人との大きな違いであった.一方,肌色の調整作業を課した場合には,素人がほとんど肌色領域だけに注目しているのに対して,習熟者は周囲の衣服や光の反射などと対比しながら肌色を調整していることが明らかになった.このような不自然な部分や対比点を探索する場合において,注目点の位置は重要な情報であることが明らかとなった.