好ましい肌色は記憶色と大いに関連があり,女性の画像を対象に研究してきた.しかし近年,中国の特に上海のような大都会の男性の化粧は一般的になりつつある.このような中国の若者の生活スタイルの劇的な変化が,日本と中国における男性の好ましい肌色を調査した本研究のきっかけとなった.その結果,日中間で差がみられ,日本の方が,明度が低く,彩度が高い,また,従来の女性画像の結果と比較すると,明度が低く,黄味がかっていて彩度が高いことがわかった.好ましい女性の肌色と比べ,男性の肌色については,日本人はより明度の低い,より黄味がかった,そしてより彩度の高いものが好まれた.中国人についても明るさや色味についての傾向は同じであったが,クロマについては男女のサンプルの間で差はなかった.日中ともに,観察者の男女間の差は観られなかった.SD法による評価結果の因子分析によって抽出された男性の好ましい肌色の決定因子は,日本では「前向きな性格」であるのに対し,中国では「良い人柄」第1因子であった.このような日中における好ましい男性に求める印象の違いが,好ましい肌色の違いの原因になっていると考えられる.