カラー写真の画像形成色素として最近開発,使用されている色素4種の電気化学的挙動を,アセトニトリル溶媒中と,これにプロトン供与体としてメタノールを添加した溶媒中で,固定電極上でのサイクリックボルタンメトリーと回転ディスク電極を用いたボルタンメトリーにより調べた。酸化波として2つの波が観測される。第1は,準可逆な酸化第1段階の波である。第2は,ほぼ不可逆または可逆性の低い準可逆的な酸化第2段階の波である。またこの挙動は,メタノヤルを添加しても基本的には変化しない。還元波は,アセトニトリル中では可逆性の低い準可逆,またはほぼ不可逆な波である。この外に,ロイコ色素の酸化が弱く観測される。この場合,ロイコ色素は,色素のアニオンラジカルとアセトニトリル中に不純物として混在する水との反応によって生成されると推定される。これは,以下の事実によって確認される。メタノールを添加した場合には,還元波は不可逆な,ブロードな波となり,これに対応してロイコ色素の酸化波が強くなる。ロイコ色素の生成機構は以下の様であると推定される。まず色素の1電子還元によってアニオンラジカルが生成され,このラジカルは,プロトンと反応して中性ラジカルになる。この中性ラジカルは,1電子還元されてアニオンになる。このアニオンはプロトンと反応してロイコ色素が生成される。つまり,ロイコ色素は,ECEC型の2電子過程で生成されると推定される。また,中性ラジカルの還元電位は,色素の還元電位と接近しているが,僅かに卑側にあると推定される。