Mie散乱の理論にもとついて, 微小金属球による局所電場の実効増強因子 Q NFの簡便な公式を与え, 高分子膜中の銀微小球の Q NFを入射光波長λ=300-700nm, 球の直径2 a =10-400nmについて計算した。入射光が銀微小球の表面プラズモンモードと共鳴するとき, Q NFは鋭い極大を示す。表面増強電磁気過程の典型例として, 高分子カルボン酸銀塩膜: カルボキシメチルセルロース銀塩 (CMCAg+) 膜, アルギン酸銀 (ALAg+) 膜, の表面増強ラマン散乱 (SERS) をとりあげた。カルボキシレートイオン (COO-) の対称伸縮振動バンドのラマン強度は膜のUV光分解とともに増加し, 最大値に達した後, 減少した。ラマン強度と光分解銀の凝集状態のあいだに密接な関係のあることが指摘された。λ=510nmの入射光に対する Q NFの計算値がCMCAg+膜, ALAg+膜のSERSの種々の特徴と比較された。 Q NFは金属微粒子が表面増強電磁気過程をひきおこす能力を示す実用的な尺度として有用であることが提案された。