2種類のシアニン色素を含む混合J凝集体の構造は, 分離型 (S型), モザイク型 (M型), 自己主張型 (HP型), 融合型 (HA型) の4種類に分類され, それぞれは特徴的な分光学的性質を有する。LB膜中でJ凝集体を形成するシアニン色素;キノシアニン色素 (dye I, S120), チアカルボシアニン色素 (dye II, dye III), オキサシアニン (S9), チアシアニン (S11) のうちから次の組み合わせをえらび, LB膜中で混合J凝集体を作成した;dye I-dye II, dye II-dye III, S9-S11, S120-dye I。 dye I: dye IILB膜では, dye I凝集体, dye II凝集体に特有の2本のJバンドと共鳴蛍光ピークが見られ, 共鳴蛍光の消光, 増感はPerrin型速度論に従う。dye I-dye IIはS型凝集体を形成すると結論される。S9: S11 LB膜, S120: dye ILB膜でも2本のJバンドが認められるが, Jバンドのブルーシフト, 分子構造の類似性から, これらの組み合わせはM型凝集体を形成すると推定される。一方, dye II: dye III LB膜では, 単一のJバンド, 共鳴蛍光ピークが見いだされ, ピーク位置は色素の混合比とともにシフトした。これより, dye II-dye IIIの組み合わせではHA型凝集体が形成される。これらの特徴を分子構造の類似性をあらわす「立体的条件」と, パラメターθDAで表される「電子的条件」の観点から解釈した。