ゼラチンの分子量分布はゼラチンの物性に大きな影響を与えるため, 写真用ゼラチンの製造においても分子量分布の制御は重要な問題である。 我々は超音波照射によりゼラチンの分子量分布を制御することを目標として研究を行ってきた。物理的に十分な強度を持つ超音波をゼラチンの水溶液に照射することによりゼラチンの架橋結合が切断されることは以前から知られていた。これはすなわち超音波の照射によりゼラチンの分子量分布が変化すること, 言い換えれば写真用ゼラチンの物性を変化させられることを意味している。 この観点からまず我々はゼラチン中で最も大きな分子量を有する画分であるH画分の超音波による分解過程の速度論的な解析を行い, その分解過程が一次反応であることを明らかにした。次に, 他の画分の分解過程についてもこれが当てはまるかどうかを調べるために分画したゼラチンの個々の画分の超音波による分解過程を調べた。さらにこれらの画分が共存する場合の個々の画分の分解過程に関して仮説を立て, これを検証した。