けん銃またはライフル銃から発射された弾丸には発射銃器に固有の微小な傷や凹凸等の特徴が線条痕の形で転写される。本研究では, 現在専門家による比較観察と主観的判断に任されている線条痕照合とそれによる発射銃器の同定作業を, 計算機により定量的に行うことを試みた。同一銃によって発射された2個の弾丸から線条痕の顕微鏡画像各5枚を撮影し, 入力データとした。各画像から1次元濃淡波形を抽出し, これらの問の類似性を定量化した。次に定量化した類似性に確率モデルを適用し, 着目した類似領域の有意性を計算した。その結果, 線条痕領域のうちの一部分の類似性だけからでも有意水準10-6で同定が可能であった。この結果は, 本手法による線条痕自動照合の可能性を示すものと考えられた。