種類の硫黄増感剤で熟成した単分散の正常晶14面体臭化銀粒子上に形成された潜像中心の位置を抑止現像法により観察し, 潜像中心の形成位置の指数面選択性を定量的に評価した。低照度長時間露光の条件下で, 増感が浅い場合にはいずれの硫黄増感剤でも {111} 面に潜像中心が選択的に形成された。ところが, 最適増感や過増感の場合においてはチオ硫酸ナトリウムが {111} 面選択性を示したのに対し, トリエチルチオ尿素や3-エチルー5-ベンジリデンローダニンは {100} 面選択性を示した。すなわち, 潜像中心が優先的に形成される指数面が, 硫黄増感剤の種類や熟成の程度により変化することが分かった。放射性同位元素35Sで標識した硫黄増感剤を用いて, 硫化銀の生成反応を追跡した。また, 潜像中心が {111} 面よりも {100} 面に選択的に形成された場合に, シアニン色素による14面体臭化銀粒子の固有感度の低下が小さかった。これらから以下の結論を得た。{111} 面上の硫化銀からは速やかに有効な硫黄増感中心が生成する。これに対して,{100} 面上の硫化銀からは硫黄増感中心の生成が遅い。けれども十分に生成すると,{100} 面上の硫黄増感中心は {111} 面上のものよりも潜像形成の競争に強い増感中心になる。