硫黄増感を施した臭化銀粒子上の潜像中心を抑止現像により観察し, 潜像中心の形成位置の指数面選択性を求めた。硫黄増感を施した後にシアニン色素や4-ヒドロキシ-6-メチルー1, 3, 3a, 7-テトラザインデン (TAI) を加えた場合の潜像中心の形成位置は, これらを添加しない場合と同じであった。これに対して, シアニン色素を添加した後に硫黄増感を施すと, 潜像中心は色素が吸着しなかった粒子表面上に形成された。TAIを添加した後に硫黄増感を施すと, 潜像中心は {100} 面上に形成された。放射性同位元素35Sで標識した硫黄増感剤を用いて調べたところ, 色素やTAIが吸着した粒子表面上でも硫化銀は生成していた。これからシアニン色素やTAIにより潜像中心が特定の位置に選択的に形成されたのは, 次の機構と考えられた。色素やTAIが吸着した粒子表面上に生成した硫化銀は, これらにより硫黄増感中心への成長が阻害される。これに対して色素やTAIが吸着していない粒子表面上では, 生成した硫化銀が速やかに硫黄増感中心に成長する。この結果として, 潜像中心が色素やTAIが吸着しなかった特定の粒子表面に選択形成される。