硫黄増感された立方体臭化銀乳剤粒子の長波長域感度の活性化エネルギーは, 八面体臭化銀乳剤粒子の場合よりも小さかった.この活性化エネルギーは, 光励起された硫黄増感中心から臭化銀の伝導帯へ電子が注入されるのに必要な熱的エネルギーと考えられる.すなわち, 立方体臭化銀粒子上に形成された硫黄増感中心の電子捕獲準位の熱的深さは, 八面体臭化銀粒子上のそれよりも浅いことが分かった.臭化銀粒子の格子間銀イオン濃度が低下すると, 硫黄増感中心の電子捕獲準位の熱的深さも浅くなることが示唆された.硫黄増感された立方体粒子は, 硫黄増感された八面体粒子よりもシアニン色素による固有減感が小さかった.臭化銀粒子の {100} 面上に形成された硫黄増感中心は,{111} 面上に形成された場合よりも電子捕獲準位が浅いために捕獲された光電子の再励起が起こり易く, 電子が集中化し潜像形成の競争に強い増感中心になる.