銀塩光熱写真 (Photothermography, いわゆる「熱現像銀塩写真」) の系で優れた現像剤として知られているビスプェノール誘導体と, その水酸基をメトキシ基でブロックしたモノブェノール誘導体の電子移動特性について検討を行い, 分子内水素結合の効果と銀塩光熱写真における熱現像特性との関係を考察した. ビスプェノール誘導体に由来するプェノキシルラジカルのESRスペクトルより, プェノキシルラジカルは水酸基と分子内水素結合を有していることがわかった. この分子内水素結合はビスプェノール誘導体の2電子酸化反応過程において1電子酸化電位を低下させて酸化を促進する重要な要因となると思われる.