ジケトピロロピロールは水素結合系の赤色顔料である.我々は対称心を持つ2種類のピロロピロール誘導体の1: 1混晶 [1, 4-ジケト-3, 6-ジフェニルピロロピロールと1, 4-ジケト-3, 6-ジ (t-ブチルフェニル) ピロロピロール] と両者の混成構造を持つ非対称な誘導体 [1, 4-ジケト-3-モノ (t-ブチルフェニル) ピロロピロール] の結晶構造ならびに電子構造が酷似していることを報告した。本研究ではその詳細な発現メカニズムを解明することを目的とし, 両者の単結晶を育成し, 結晶構造を明らかにすると共に偏光反射スペクトルの手法により電子構造を検討した.その結果, 双方の晶系は三斜晶系, 空間群はP1であり, 結晶学的パラメーターも非常によく類似していることが明らかになった.双方の結晶構造で共通していることは “1つの分子のt-ブチル基とそれに対峙するフェニル基” が交互に配列し, 結晶中の分子の環境が全く等価であることである.この局所的類似性が結晶構造と電子構造が酷似する要因であることが結論にされた.