本報では, デジタル写真システムの階調特性を, 直接, 電子的に評価する方法論に関する研究の結果を記す.本研究は, 銀塩写真システムで培われた調子再現特性を論ずるためのCamera-Through Sensitometry (CTS) の手法をデジタル写真システムに応用し, Digital Camera Through Sensitometry (Digital-CTS) 法の確立を目指して行った.Digital-CTSでは, デジタル写真システムが全電子画像システムであり, 調子再現特性も全電子的にOn-lineで得ることが求められる.本報は, 調子再現特性を全電子的に得る方法論の確立を目指して進めた研究の結果を記す.検討のためには, デジタルスチルカメラ (DSC) による撮影のターゲットとして測色値による等明度ステップチャートを試作し, DSCからの出力データをグラフィックソフトウェアを導入したPCによりモニター画面上のチャート像を画像解析した.更にPCにデジタルプリンタを接続し, DSCの出力データからプリントを制作してそのチャート像も画像解析した.この結果, 撮影されたチャート像におけるステップ毎の明度変化は, PCのモニター画面における再現像においても, PCに接続したプリンタからの出力プリント像の場合においても直線性が保たれることがわかった.更に再現像における明度変化の直線の勾配は, DSCの機種によって明らかに異なることも分かった.このDSCの撮影によって得られるチャート像の明度特性について, PCにおいて直接電子的に階調評価する方法をSoftcopy Evaluation法とし, プリンタによる出力像の階調性を計測する従来法に準ずる方法をHardcopy Evaluation法とした.二種の評価法において明度変化の直線の勾配に関するDSCの機種の効果は, Softcopy Evaluationの場合の方がHardcopy Evaluationの場合より明確であることが分かった.また, DSC機種の効果について, 明度特性によって表されるチャートの再現像の階調性と被写体の実写像における主観的な階調性を較べた.その結果, 明度変化曲線の勾配がきつくなる結果を示すDSCの場合程, 実写像の階調変化が急であってコントラストも明確で硬調的な特性を示すことも明らかになった.以上の検討の結果, 本報におけるSoftcopy Evaluation法は, 階調特性の評価を全て電子的に行うDigital CTSを確立するために有用な解析法となることが分かった.