ハロゲン化銀粒子中の刃状転位は, その物性と写真的効果において非常に重要な働きをもつ. 即ち, 刃状転位は有効な粒子内部の電子トラップとなり, 表面トラップより深いトラップを与え, またイオン伝導度を上昇させる. 刃状転位による感度上昇, 潜像形成サイトの提供, 及び相反則不軌の顕著な良化は, これらの性質を反映したものと考えられる. さらに硫黄増感においては, 刃状転位の表面への出口が潜像サイトとなり, 相反則不軌のない硫黄増感を実現させる. これは, 刃状転位の表面への出口において表面欠陥が生成し, そこに普通の表面とは異なった硫黄増感中心を生成する事に起因すると考えられる. また刃状転位が存在する粒子は, 露光前圧力減感を惹起し, その原因は粒子成長中に生じた予め存在する刃状転位と, 加圧によって発生する移動転位の絡み合いによる転位の蓄積にあると考えられる.