銀塩光熱写真感光材料における潜像形成機構を明らかにするため, ナノサイズのハロゲン化銀結晶のイオン伝導度を測定して, 粒径依存性と脂肪酸銀添加の影響を調べた. ナノサイズ領域でもマイクロサイズ領域から連続して, イオン伝導度は粒径に反比例した. また, 脂肪酸銀が少量でも存在すると, イオン伝導度が大きく低下した. これらの結果により, 銀塩光熱写真感光材料における潜像形成には, 脂肪酸銀が大きく関わっており, イオン過程での銀イオン供給源としてはハロゲン化銀結晶中の格子間銀イオンのみならず, 脂肪酸銀から解離された銀イオンが考えられた. これより銀塩光熱写真感光材料の潜像形成過程は, 湿式処理銀塩写真材料において従来提唱されている潜像形成過程とは異なることが示唆された.