表題化合物の真空蒸着膜を厚くすると新たな分子配列が形成され, “丁会合体” が出現すると言う報告があった.本論文では表題化合物が僅かな発光能を有することに注目し, 積分球検出器を使った一連の透過率測定を行ない “丁会合体” の発現機構を検討した.積分球を用いると放射状に放出される発光成分を “試料と検出器” の距離の関数として検知できる.その結果, 厚膜試料で観測された “7会合体” の吸収帯は「厚膜に起因する微弱な透過光」に「入射光で励起された微弱な発光」が加算されたときに出現し, 検出器に入る発光成分が増えると消失することが分かった.このような吸収帯は実体のない見かけ上のもの (artifact) であり, モル吸光係数が15万もある物質の蒸着膜スペクトルを高濃度 (蒸着膜の厚膜: 1500A) で測定していること, 更に入射光による発光現象を考慮していないことに原因があることが分かった.